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東京家庭裁判所 昭和35年(家イ)1425号 審判 1960年7月21日

〔解説〕韓国においては、重婚は、従来慣習により当然無効とされていた(注1)が、昭和三五年一月一日施行の韓国新民法により、これが取消原因となつたことは周知のところである。

ところで、その経過規定である韓国新民法附則第一八条は、本法施行日前の婚姻に本法により取消の原因たる事由があるときは、本法の規定によりこれを取消すことができる旨規定している(注2)。

本件審判は、当時の慣習によれば当然無効事由にあたる本件事例についても、同条が溯及的に適用されるとして、取消の審判をしたものと推測されるが、この解釈には大いに異論(注3)も存するであろう。

注 1 大正一二年一二月三目民事第四四四二号民事局長回答六信「渉外的戸籍事務の実証的研究」二七七頁参照

2 家裁月報一〇巻九号二〇七頁所掲

3 昭和三五年五月一〇日民事甲第一〇五九号民事局長回答(法曹117号一〇〇頁所掲)

(本籍 韓国 住所 東京都

申立人 李ミエ(仮名)

(本籍 申立人と同じ 住所 東京都)

相手方 李文良(仮名)

上記当事者間の昭和三五年(家イ)第一四二五号婚姻取消調停事件について、当事者間に合意が成立し、原因の有無について争がないので、当裁判所は必要事項を調査し、調停委員の意見を聴いた上、次のとおり合意に相当する審判をする。

主文

当事者間の婚姻(昭和二五年○月○○日東京都板橋区長受附)を取消す

調停並びに審判費用は各自負担とする。

(家事審判官 森松万英)

事件の実情

一、申立人は神奈川県○○郡○○町四〇番地父安井五郎母キミの長女として本籍を有していたが、昭和二二年一一月○日韓国済州道○○○一三番地李文良と事実上結婚して、同棲し、昭和二五年一月二八日板橋区○○町二八番地で長女友子が出生したので、正式に相手方と婚姻届出を為し、そして長女の出生届出をしたので、申立人も長女友子も韓国の国籍を有することになりました。

申立人は相手方との間に其の後二人の子を出産したのであるが、昭和三二年○月頃、相手方の妻曾慶愛とその子供二人が韓国から密入国致し、九州で取調を受けて大村収容的に入り同年○月仮放免となり上京し、相手方はその妻子と同棲するとの事で、申立人は自分の子供を相手方に預けて相手方と別居し現在に及んで居ります。

申立人は、相手方に妻子が居るという事は全然知らないで、相手方と夫婦となり婚姻届出を致したのですが、相手方は妻曾慶愛と離婚することなく婚姻を継続致し居ります。それで相手方と申立人との婚姻は重婚につき、之を取消し、申立人は日本の国籍を回復致したくこの申立に及ぶ次第です。

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